エフェクターの種類
エフェクターは大きく2つに分けることが出来ます。
一つは原音そのものを変化させるタイプのもの
・ダイナミクス系
・歪み系
・モジュレーション系の一部
もう一つは原音にエフェクト音を付加するタイプのものです。
・空間系
・モジュレーション系の一部
原音を変化させるタイプ
このタイプは音を圧縮するコンプレッサや歪ませるディストーション、揺らぎを与えるコーラスなどが当てはまります。
1.ダイナミクス系エフェクト
ダイナミクスというのは「音圧」の事。
音の大きさを変化させて、音声信号の一部を強調したりカットしたりするエフェクトです。
例としてコンプレッサーを挙げます。
コンプレッサーとは決められたレベル=「スレッショルド」 より大きい音声信号を設定した比率で圧縮するという物です。
では実際圧縮してみます。まずは元のスネアドラムの音を聴いてみてください。
元のスネアドラムの音
-24dbより大きい音声信号を1/3に圧縮します。Threshold(スレッショルド)=-24db、Ratio(レシオ)=3.0:1 に設定して実行します。
ぺっちゃんこになってしまいました。
そこで音量をノーマライズ処理して大きくします。その結果がコレです。
圧縮し音を大きくしたスネア
上記の処理をイメージするとこんな感じです。
胴鳴りが強調され、鳴ってる時間が延びた感じになりました。
圧縮を始める時間を指定してやればアタック部分だけ強調するなんてことも可能です
上と同様に-24dbより大きい音声信号を1/3に圧縮します。そしてアタックタイムを80ms遅らせます。
元の波形がコレです。
圧縮を掛けると、アタック部分はそのまま残り後半の音声信号だけ圧縮されてます。
圧縮後を音はこんな感じです。
圧縮後のスネア
アタック部分が強調されて聴こえます。
イメージはこんな感じです。
2.歪み系エフェクト
楽器での歪み系というのは、いわゆるディストーション系エフェクトの事を言います。
元々はあまり減衰時間の長くないエレキギターを歪ませることによってロングトーンのリード楽器として使えるようにするために産まれたそうです。
正確な分け方は無いですが、歪み具合によってオーバードライブ、ディストーション、ファズと呼ばれます。
原理は簡単。
元音の音量を回路を通過できるボリュームの限界よりでっかくしてギャンギャンしたサウンドにしてしまおうという物です。
イメージはこんな感じです。
■オーバードライブ
これは歪み具合が最も軽いもので、原音のニュアンスをあまり損なわずに歪みによって倍音を付加することが出来ます。
例えばエレキギターやエレピに使って生っぽい雰囲気を出したり、綺麗なリズム系の音をワザと少し汚れた感じにする時に使います。
■ディストーション
もう少し強力な歪みが欲しい時に使います。
歪が強い為、倍音関係に無い音を入力するとかなり汚い音になってしまい、音程関係もハッキリしなくなってしまいます。
その為、単音、ユニゾン(重ねる)、オクターブ、5度関係の音(ドとソなど)を演奏する時に使われることが多いです。
ギター音色にはもちろん、強烈なノコギリ波シンセリードに掛けたり、
2つの音を5度で重ねて演奏して過激なリードサウンドを産み出したりと色々出来ます。
■ファズ
メチャクチャブーストするエフェクトです。原音が完全に潰される為、音が劇的に変わってしまいます。
当然、和音での演奏は不可能です。リードパートや単音楽器専用です。
では実際ディストーションを掛けてみましょう。
これが元の波形です。
15dbほどブーストします。
処理後です。右側は判り易いようにボリューム80%にしてみました。
なんか形が変わっちゃいました。ディストーションは何もエレキギター専用ではありません。
歪みによって元の波形に無い高次倍音が付加されるので、シンセサイザの音に掛けて音作りに積極的に活用しましょう。
■その他の歪み系エフェクト
最近のシンセサイザにはデジタルならではのとんでもない歪ませ方が可能な物があります。
●シェイパー
ウェーブシェイピングとも呼ばれています。
数周期の波形で入力波形を変形させ、信号を歪ませます。
トランペットの吹き始めの「バリッ!」とした感じを出すとか、シンセベースのクセを付けるとかに使います。
ニンジンを例えにするとニンジンを星型の形にするときに使う「型」がウェーブシェイピングテーブル。入力波形がニンジンです。
アルミで出来た型をニンジンに押し付けると切れて星型になる。そんなことを音に当てはめるのがウェーブシェイピングです。
●ビット・リデューサー
Bit Reducerはデジタル信号のビットを減少させてデジタル量子化ノイズをワザと発生させ、信号を歪ませます。 普通16bit信号だと65535段階の数値で表されます。 コイツをワザと8bitとかにして強引に256段階などの数値にしてしまい、他の信号をカットしてしまいます。 当然ノイズだらけになりますが、こんな恐ろしいことを音作りのネタにしてしまうのです(^^;;
●レイト・リデューサー
Rate Reducerはデジタルサンプリングレイトを減少させて、デジタルエイリアシング(折り返し)ノイズを発生させます。
44.1Khzとか48Khzとかありますけどアレを減少させて音を歪ませてしまうのです。全くとんでもないことを考えますね(^^;;
※ 上の例では、元の信号が4KHzだったのを2Khzにした場合です。信号「B」が折り返して「B’」に移り、 ノイズを発生させています。
サンプリング周波数を下げた場合、サンプリング周波数を超えた部分が折り返してノイズになります。
普通はサンプリング周波数を下げた場合、超えた部分をLPFでカットする「アンチエイリアシング」という処理をしてノイズを防ぐのですが、
複雑な倍音が発生する為、このノイズをワザと残し、音作りに利用してしまうという、恐るべき発想です。
3.モジュレーション系エフェクト
モジュレーション系エフェクトとは原音に様々な「揺らぎ」を与えるエフェクトの事です。
種類によって原音にエフェクト音を加える場合と原音を直接変調する物があります。
■コーラス
原理は20msくらいのディレイ音を揺らして原音とミックスすることによってピッチのずれによるアンサンブル効果を狙う
というものです。
ディレイ音をたくさん用意して各ディレイ音の揺らし方を変えてたくさん重ねれば多相コーラスになります。
各ディレイ音を左右に振り分けたりすると音像に広がりを与えることが可能です。
■フランジャー
基本的にコーラスと同じような仕組みですが、ディレイタイムが短く、フィードバック回路で出力された音をもう一度戻して、
位相の微妙なズレによりジェット機の上昇/下降の様な音にすることが出来ます。
■フェイザー
フランジャーに似てますが、ディレイは無く、原音と少し位相をずらした音をフィードバックして重ねることにより
「うねり」を発生させます。
■トレモロ/オートパン
LFO(サイン波、ノコギリ波、矩形波など)を使って原音を揺らします。
トレモロは音の大きさに対してLFOを掛けます。音が大きくなったり
小さくなったりを繰り返します。
オートパンは音の定位(音の左右の位置)に対してLFOを掛けます。
音が右に行ったり左に行ったりします。エレクトリックピアノなどに掛けたりすると雰囲気が出るかも知れません。
空間系エフェクト
空間系エフェクトとは「やまびこ」の様な、いわゆるエコー効果を応用したエフェクタの事です。
原音と付加されたエフェクト音をミックスして出力します。
■ディレイ
最近のディレイはデジタルディレイと言って、サンプリング技術の応用になっています。
原音をサンプリングし、それを数ミリ秒遅れで再生することにより、エコー効果を出します。
フィードバック回数を増やし、ディレイ音の数を増やしたり、ディレイ音を左右に振ってパンニングディレイにしたりと様々なエコー効果が作れます。
ディレイ音の繰り返す間隔をMIDIの演奏テンポに同期させたり出来る物もあります。
フィードバックをゼロにして、ディレイタイムを極端に短くすれば、音を重ねたような効果を狙えます。
また左右に振ればスピーカーの外側から音がするような錯覚を起こす効果も期待出来ます。
ディレイ音の音質をこもり気味にすると、音の奥行きが増します。
最近では計算能力が余り余って、トリプルとかクアドラとか名前が付いてるディレイも装備されていて、
3個も4個もディレイタイム、フィードバック、定位の設定を組み込めるマルチタップディレイもあります。
■リバーブ
残響効果を付加します。例えばコンサートホールやお風呂場のような場所での音の跳ね返りをシミュレーションします。
リバーブはぶっちゃけた話、もの凄い沢山のディレイを重ねた物です。
あまりにも沢山過ぎて、その時間差が人間の耳では聞き分けられない程なので、人間には残響音として聞こえるのです。
●リバーブタイプ
リバーブのタイプを決めます。
ホール、ルーム、ステージなど、部屋の大きさをシミュレートしたアルゴリズムが用意されているので選んでください。
部屋のサイズを指定することもあります。
●リバーブタイム
残響時間がどれだけ続くか設定します。デジタルなので好きなだけ持続出来たりします。
だからSE(効果音)的な使い方をしたければ長くても良いわけです。
普通はルームリバーブで1秒、コンサートホールなどで長くても3秒くらいでしょう。
●プリディレイ
音が発生したあと壁などに当たって最初に音が帰ってくる時間を指定します。
残響部分より速く聴こえる初期反射音が届くまでの時間です。
●ハイダンプ
残響音をこもらせます。壁の材質などで違いがあり、材質が固い程変化が少なく、柔らかければ音がこもります。
●リバーブ・デンシティ
リバーブによっては残響音の密度を指定できる物もあります。
他にも残響音をしていした時間になるとカットするような仕組みのあるゲート・リバーブ、リバーブ音を逆転再生したようなリバース・ゲート、 残響音をゼロにして初期反射音だけにするアーリー・リフレクションなど、ちょっと凝った技もあります。