音作り入門
シンセサイザーでの音作りの基本を見ていきましょう。
色や光に三原色と呼ばれるものがあるように、音にも三要素があります。
音の三要素とは
- 音の高さ(ピッチ)
- 音の特徴(倍音成分)
- 音量の時間的変化
の3つです。
音の高さは鍵盤を弾く場所で決めます。
ということは残りの二つ、音の特徴(倍音成分)と音量の時間的変化を作ることがすなわち
「音色を作ること」となります。
音の高さ(ピッチ)
音の物理的な高さ(基本周波数[Hz])を鍵盤などで変化させて音楽的に表現します。
乱暴に言うと440HzをA(ラ)として倍の周波数880Hz だと7音上がって
1オクターブ上、さらに倍の1760Hzで2オクターブ上とか、半音を含めてオクターブ辺り
12段階にぶった切って演奏した物が音楽ということになります。
PCM音源(メモリーに音の波形を記録した物を再生する音源)では再生スピード(周波数)を
速くして高い音、遅くして低い音を作り出します。
ただ、スピードを変化させると音の三要素の残り二つ(倍音成分や音量)もおかしくなる為、
あまり極端にスピード変化させると変な音になります。(テープの早回し遅回しのような変化)
そこで、音がおかしくならないように複数のポイントで再生する波形を複数用意しています。(マルチサンプル)
最近の電子ピアノやシンセサイザのピアノなどは大容量メモリに88ある鍵盤全てを音の強さも何段階にも分けて録音し、
再生してしまうという荒技を行っています。
近年ではピアノの構造をコンピュータ上で計算して音を生成する「物理モデリング音源」も登場しています。
しかも実験レベルではなく、実用レベルで。
この場合、全鍵盤、どんな打鍵の強さ(ベロシティ)でも違和感無く演奏可能となります。(アプリケーション容量、たったの100MB)すごい。
音の特徴(倍音成分)
倍音って何?っていうのは当サイトのコラムを読むか、Google検索してください。
音色というのは音の波形の特徴と音量の時間的変化で決まります。
ここでは音量を除いた音色の特徴を解説します。
例えば、ピアノ。ピアノは太い弦を3本束ねて、それをハンマーでぶっ叩いて音を出します。 ハンマーの叩く音、弦同士の干渉音、その音がピアノの筐体に反射しリスナーに届く。 ペダルを踏んだか踏まないか、聴く人の聴く位置によっても様々な音がします。 こういった様々な要素を重ね合わせた物が「音の特徴」となっています。
例えば、フルート。フルートは筒状の金属に穴を開けた物に人の息を吹きかけて音を 出します。金属に息を吹きかけた時のブレスノイズ、金属の筒を通った空気が干渉して 出来る音など、全ての要素が「音の特徴」となっています。
シンセサイザーは、これらの「音を特徴」を自由な発想で本物の楽器を真似したり、 新たに作り出して未知の音を作り出すことが出来るのです。
例えば、ピアノであれば、弦の素材を変えちまおう!弦の本数変えちゃおう!
ピアノの大きさ変えてしまおう!ハンマーの大きさや素材を変えてしまおう!とか。
矩形波にホワイトノイズを適度に加えるとフルートみたいな音になるんじゃね?
サイン波2つ用意して位相変調すると金属音みたいな音するからピアノの音と一緒に
鳴らすと気持ち良い音鳴るんじゃね?
と素材を変更したり、足したり、掛けたり、ある周波数成分を削ったりと様々な工夫をして
音を合成出来るのです。
<代表例>
・アナログシンセサイザー(バーチャルも含む):サイン波、矩形波、パルス波、ノコギリ波、ホワイトノイズなどのシンセサイザー基本波形
・周波数変調等で波形を加工して出力:オシレーターシンク、クロスモジュレーション、位相変調(FM音源)、AM変調(振幅変調)、ウェーブシェイプ
・PCM音源(pulse code modulation):メモリーに音の波形を記録した物を再生する音源
・ウェーブテーブル音源 :上記PCM波形を複数束ねたデータ(ウェーブテーブル)を用意し、様々なテーブルの読み出し方をして音色変化させる音源
・ウェーブシーケンス音源:上記PCM波形を複数繋げたデータ(ウェーブシーケンス)を用意し、様々な読み出し方をして音色変化させる音源
・物理モデリング音源:楽器の物理構造を演算で再現する音源(オルガン、金管楽器、木管楽器、弦楽器、打楽器などに叩く、吹く等のアクションを与えた場合の音を計算で出力する)
・ローランド社SuperNatural音源:詳細は不明だがPCMデータをピッチ(音の高低)、タイム(再生時間)、フォルマント(音のキャラクター)で分解して違和感なく再生する同社のバリフレーズ技術に楽器の振る舞い(叩いた音、引っ掻いた音、息を吹きかけた時の音などの楽器的なノイズ等の要素)を加えて出力する音源
音量の時間的変化
音色の特徴を作ったら最後に音量の時間的変化を決めます。
(順に「基本型」>「ヤマハ型(Montage/MODX)」>「ローランド型(ZENCore)」>「コルグ型(KRONOS/NAUTILUS)」)
ピアノやギターは弦を叩いたり弾いたところが最大音量で徐々に減衰していきます。
オルガンは最初から最後まで最大音量で鳴りっぱなしです。
バックで鳴らすコーラスやストリングスは、立ち上がりも鳴り終わりも滑らかに終わる音
がよく使われます。
シンセサイザーでは音量の時間的変化も自由に変更可能です。
ギターとバイオリンの音色は実は似ていて、ギターの音量の時間的変化を滑らかにして
あげるとバイオリンの様な音になってしまったりします。
「ピアノやギターだから減衰する音だ」という発想を捨てて音量の時間的変化を
変えてやると、聴いたこともないような音になります。
シンセサイザーの場合、フィルター回路を使用して周波数成分を時間的変化させることも自由に出来ます。
以上のように、シンセサイザーではこれら音の三要素を自由な発想でこねくり回して 気持ち良い音、今までに聴いたことのない音などを作り出すことが出来るのです。