KRONOS/NAUTILUS概要
※ 2023年8月時点で判っている範囲で勝手に書いています。
※ ここに書いてあることが全て正しいとは限りません。参考程度に読んで下さい。
「時空を超え、未来に響く音。」
KRONOSは2011年、同社のモンスターシンセサイザーOASYSで培った技術を現在のテクノロジーで再構築し、さらに新音源、新機能を追加した
コルグシンセサイザーの集大成です。
2012年7月に「KRONOS X」、2014年11月に「New KRONOS(KRONOS2)」(第三世代)になりました。
OSを最新にすれば、それほど違いはありません。 ※正確には初代KRONOSにKRONOS Xと同じシステムボードを使った後期型が存在するらしい・・・
2020年11月にNAUTILUS、2023年7月にアフタータッチ装備のNAUTILUS ATを発売しました。
概要はココに書かれています。
https://www.korg.com/jp/products/synthesizers/kronos2/
https://www.korg.com/jp/products/synthesizers/nautilus/
KRONOS/NAUTILUSの中身はどうなってるの?
si7さんが初代KRONOSの中を公開しています。http://si7-lab.blogspot.com/
初代KRONOSはメインエンジンに「Intel D510MO」というMini-ITXのマザーボードを使用し、Atom D510で動いています。
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20100107/1022018/
Atom D510は「Pine Trail(パイントレール)」の開発コード名で呼ばれていた小型PC向けのCPU。
2009年12月に発表したデスクトップPC向けのデュアルコアCPU(ハイパースレッディング付き)で動作周波数は1.66GHz。
ちょうどOASYSに搭載してるPentium4と同等の実力を持ってます。それでいて消費電力たったの13W。メモリーはPC2-6400(DDR2-800)の2GB。
CPUにメモリコントローラが内蔵されており、シングルチャネル動作となるので増やしてもデュアルチャネルにはならず、速くはならないです。
メモリ増設はOS Ver1.5以上で1GBモジュールが追加できます。追加作業はコルグに有償で頼むことになります。
頑張れば自分で出来なくもないがサポート外となります。32bitOSな上、マザーボードの制限(4GB)で3GB以上に増やしても無駄です。
2GBメモリを刺した場合は、メモリ容量が1.25GB増え、ユーザー領域が合計2.25GBになるようです。(0.75GBは無駄になる)
KRONOS XやKRONOS2はメモリ容量や搭載数増やしても無意味です!(シングルチャネルです)
これにSATA接続でSSD(東芝製らしい)が付いており、OSやEXsサンプル波形を読み込んだりHDレコーディングに使用します。
SSDに関してもEXsなどで音源と深く関わっており、換装はオススメしませんが、外国の人がIntelのSSDに交換してる例もあるようです。
ただしKRONOS2でもSATA2.0なのでSSDを高級な物に変えてもSATA2.0(3Gbps)の制限で最大速度が250MB/s位しか出ません。
速度アップを目的にしたSSD換装は無意味です!(容量アップと耐久性向上は見込めるかも)
コントローラやタッチディスプレイLCD制御などはTexas Instruments AM1806(任天堂DSや携帯電話でよく使われてるARM9互換のCPU)
などが担当していてマザーボードとの通信はUSBやCOMポートでやりとりしてるみたいです。
BIOSが加工されており、中にPublicIDが組み込まれてるので、マザーボード交換も出来ません。
OSはLinuxですがコルグがフルスクラッチで組み立てた物です。カーネルにリアルタイムOS化するパッチを当てたスペシャルOSです。
要するにOASYSとは中身が全然違いますが、汎用品を組み合わせてOASYSくらいの実力を有する構成になっています。
おまけに低消費電力。これで80万円前後を30万円前後にしたのだから大した物です。
2012年7月にKRONOS Xにモデルチェンジしました。
システムボードがIntel D525MW(Intel Atom D525 1.8GHz)
メモリは3GB(SO-DIMMのDDR3-800 シングルチャネル)、SSDが62GBになりました。
2014年11月にKRONOS2 にさらにモデルチェンジしました。
システムボードがASRock IMB-140D Plus(Intel Atom D2500 or D2550 1.86GHz)
メモリは3GB(SO-DIMMのDDR3-800 or DDR3-1066 シングルチャネル)、SSDは62GBです。
KRONOS各モデルの性能の違いは殆どありません。
2020年11月にNAUTILUS、2023年7月にアフタータッチ装備のNAUTILUS ATを発売しました。
中身パソコンなのはKRONOSと一緒です。ASRockの産業用Mini-ITXマザー。
https://www.asrockind.com/en-gb/IMB-140D%20Plus
実際の実装はもっとカスタマイズして余計なもの取っ払ってます。
https://share.bublup.com/ui/landing_page?item_id=001-i-5f2bf85b-c8f3-4967-a8b8-2736b0221146
Intel Dual-Core Atom CedarView Processor D2550/N2600/N2800のどれかで、このプロセッサーはIntelでは製造完了品です。(新製品なのに!)
このボード自体EOL(End Of Life)となっており製造完了品です。(新製品なのに!2回目)
メモリは4GBで増設不可。DDR3 1066MHz SO-DIMMでシングルチャネルなので増設してもスピード変わりません。
容量大きくしても32bitOSなので意味は無いです。
SATA2(3じゃない)が2個見えますが、未使用で、実はボードの裏側にminiSATAポートがあり、そちらを使用している可能性があります。
増設するSSDを置く場所、電源が用意されてないので、増設不可と考えてよさそうです。
KRONOS/NAUTILUSはOASYSと比べてどうなの?
OASYSは簡単に言えば
「MOSS(の一部)+ M3 + Wavestation + CX3 + D16XD + Legacy Collection(Analog) + 01/w + Yamaha DX7」
みたいな物でした。
ではKRONOSはどうでしょう。
KRONOSはOASYSのPCM波形データ、音源、エフェクタ、シーケンサー、HDレコーダ、KARMA等、全てを含んでいます。
つまり、OASYSで出来る事は全てKRONOSでも可能です。(OASYSのデータはKRONOSで全て読み込めます。逆はダメ)
違いは若干ユーザーインターフェイスやLEDが削除されたのと最大発音数がKRONOSの方が少しだけ少ない程度です。
OASYSやM3にある液晶画面下のPADですが、KRONOSの場合、液晶をPADに見立てる「バーチャルPAD」機能があります。
Ver1.5からKorg nano PAD2 等を直接さしてPADの代わりにする事も可能になりました。
NAUTILUSはKROME EXと部品を極力共通化(液晶、キーボード等)し、コストダウンを図ったモデルで
KRONOSから物理インターフェイスを削除(スライダー、ベクタージョイスティック、テンキー、リボンコントローラ等)、KARMAも削除してしまいました。
PCM波形データを刷新したため、KRONOSと互換性を持たせるには44000円の別売りKRONOS互換データが必要となりました。
KRONOS/NAUTILUSの音源部は次の3つで構成されています。
・HD-1というベクターシンセシスベースのPCMシンセサイザ
※ 付属のEXs Expansion Samples ライブラリ も使えます。EXsはSSDから直接読み込むようになりました。
・EXi Expansion Instruments(SGX-2、EP-1、AL-1、CX-3、STR-1、MS-20EX、PolysixEX、MOD-7の8つ)
・EXf Expansion Effects (インサーション、マスター、トータルに使える197種のエフェクタ。)
以下、細かく見ていきましょう。
HD-1 High Definition Synthesizerが基本
PCMシンセサイザーなのだがアドバンスト・ベクター・シンセシス、つまり考え方はWavestationがベースになっています。
8段階ベロシティのM3 + Wavestation と思ってもらって構わないです。
KRONOSはプリセットPCM ROMが 314 Mbyte(1,505マルチサンプル、1,388ドラムサンプル)
これに拡張PCMライブラリー EXsシリーズ
・EXs1 - ROM Expansion
・EXs2 - Concert Grand Piano
・EXs3 - Brass & Woodwinds
・EXs4 - Vintage Keyboards
・EXs5 - ROM Expansion 2
・EXs6 - SGX-1 German D Piano
・EXs7 - SGX-1 Japanese C Piano
・EXs8 - Rock Ambience Drums
・EXs9 - Jazz Ambience Drums
・EXs17 - Berlin D Piano
・EXs18 - KORG EXs Collections
がプラスされます。(プリセットPCM ROMとEXs1~3はOASYSと全く同じ)
プリセットPCMは電源オン時にOSといっしょにRAMに読み込まれます。EXsの波形はSSDから直接読み込みながら再生します。
SSDにあると言っても、SSDにデータを要求して帰ってくるのに85ms程掛かるので、何かしらの仕組みで上手いこと再生しています。
音色チェンジは瞬時であり、音色切り替えは速いです。(波形をリバース再生させたい場合はDRAMに読み込む必要がある)
NAUTILUSはKRONOSと異なるRAM 496MB / DISK 2.3G(ROM 1,771 マルチサンプル、3,955 ドラムサンプル)
これに拡張PCMライブラリー EXsシリーズ
・EXs301: German2 D Piano
・EXs302: Italian F Piano
・EXs303: Japanese Upright U Piano
・EXs304: Prepared Piano
・EXs305: Historical Keyboards
・EXs306: Vintage Keyboards 2
・EXs307: Strings & Synths
・EXs308: Guitar Collection
・EXs309: Bass Collection
・EXs310: World Essence
・EXs311: Background Loops
・EXs312: SFX & Hits
・EXs313: Found Percussions
・EXs314: Expansion Drums
がプラスされます。
プリセットPCMは496 MBは電源オン時にOSといっしょにRAMに読み込まれます。DISK 2.3Gの部分はSSDから直接読み込みながら再生します。
SSDにあると言っても、SSDにデータを要求して帰ってくるのに85ms程掛かるので、何かしらの仕組みで上手いこと再生しています。
音色チェンジは瞬時であり、音色切り替えは速いです。(波形をリバース再生させたい場合はDRAMに読み込む必要がある)
PCM部は1オシレータにつき8段階ベロシティ・スイッチ/クロスフェード/レイヤーが可能となっています。
シングルモードでは波形として「マルチサンプル」か「ウェーブシーケンス」を選べます。
※ マルチサンプル:普通のPCMサンプル波形のことで、ピアノとかギターなどの波形の事。
※ ウェーブシーケンス:マルチサンプルを最大64個並べて順番に再生していく仕組み。
ウェーブシーケンスは自分で自由に作ることが可能で、プリセットもあります。
例えば「ピアノ→ギター→バイオリン」とモーフィングするように変化していくシーケンスを作るとか、
音階を付けてアルペジオのようにしたりとか。
Wavestationの波形も全て収録されているのでWavestationの音色を完全再現することも可能になっています。
波形は2つまで重ねることが出来、2つの波形を完全に重ねる(レイヤー)事も出来るし、 境目をクロスフェードさせて50%ずつ混ざった感じにしたりも出来ます。 最大8段階のベロシティレイヤーを作り、マルチサンプルをベロシティで鳴らし分ける事も出来ます。 8つのウェーブシーケンスをベロシティスイッチにより鳴らし分けたり2つレイヤーさせたりも出来ます。
ダブルモードでは上記の倍のことが出来る事になります。
例えば、8段階ベロシティのピアノをOSC1で作り、OSC2はペダルを踏んだときに鳴らすといった事も可能です。
ベクター・ジョイスティックおよびベクター・エンベロープ(テンポ同期可能)により各オシレータのボリューム、シンセ・パラメータ、 エフェクト・パラメータのコントロールが可能です。
1ボイスにつき2基のマルチモード・フィルター(ロー・パス、ハイ・パス、バンド・パス、バンド・リジェクト)搭載し、
フィルタ回路は4種のフィルター・ルーティング(シングル、シリアル、パラレル、24dB)が可能となっています。
1ボイスにつき1基の非線形ドライバー、ロー・ブーストがあります。
これは歪ませる回路やブーストする機能で、Triton ExtremeやSV1のValveForceのような役割となります。
そして、最終段に3バンドのイコライザーを搭載しています。
エンベロープ・ジェネレーター3基、1ボイスにつき2基のLFO、コモンLFO、キー・トラッキング・ジェネレーター4基、
AMS(オルタネート・モジュレーション・ソース)、AMSミキサー2基搭載。
KRONOS/NAUTILUSではEGやLFOはフィルタ専用とかアンプ専用など特に決まってるわけではなく、汎用的に使えます。
フィルタに使っても良いけど、それ以外にアサインしてもOK。LFOのパラメータに割り当てたり、ピッチやPANに割り当てたりとやりたい放題。
AMSというのは1つのソース(EGやLFO、ピッチベンドなど様々)で複数箇所のモジュレーションを行える機能です。
世間ではマトリックスコントロールと呼ばれる物です。KRONOSの場合、AMS同士をミックスしてしまう機能があり、
LFOとEGの設定を足し算、掛け算した結果をモジュレーションソースに出来ます。
ドラムキットも8段階ベロシティで好きな波形をチョイスして作れます。(グローバルセッティングの画面で作成します)
EXi とEXf はコルグ版VSTiとVSTエフェクト?
EXi(Expansion Instruments)とEXf(Expansion Effects)はプラグインソフトウェアを組み込む仕組みです。
・SGX-2 Premium Piano(アコースティック・ピアノ)
・EP-1 MDS Electric Piano(エレクトリック・ピアノ)
・AL-1 Analog Synthesizer(アナログ・モデリング)
・CX-3 Tonewheel Organ(トーンホイール・オルガン)
・STR-1 Plucked String(フィジカル・モデリング)
・MOD-7 Waveshaping VPM Synthesizer
(VPMシンセシス)
・MS-20EX(CMTアナログ・モデリング)
・PolysixEX(CMTアナログ・モデリング)
SGX-2 Premium Piano でKRONOSからY社のピアノの音も出る
KRONOSは
・EXs6:SGX-1 German D Piano
・EXs7:SGX-1 Japanese C Piano
・EXs12:SGX-1 Austrian D Piano(別売りソフトウェア・オプション)
・EXs17:Berlin D Piano(12段階ベロシティ・レイヤー、ウナ・コルダ・サンプルあり)
を利用したピアノ音源で、この8段階ベロシティ対応の大容量波形にコンポーネント調整機能でダンパーペダルを踏んだときの箱鳴りや
ノイズなどを加えたサウンドを出力します。German DはドイツのスタンウェイDモデル、Japanese でC ならヤマハしかありませんよね。
NAUTILUSは
・EXs301: German2 D Piano
・EXs302: Italian F Piano
・EXs303: Japanese Upright U Piano
・EXs304: Prepared Piano
となっており、KRONOSと同じピアノも収録されていますが別売りとなっています。
EP-1 MDS Electric Piano はリアルなエレピ音源
6種類のエレクトリック・ピアノの名機をリアルに再現した新開発のエレクトリック・ピアノ専用音源。
6種類のモデルごとのアンプやキャビネット、スピーカー、ビンテージ・エフェクトも再現。
他社で言うとローランドのSuperNatulal エレピ、ヤマハのCP1と同じような物です。
AL-1 はコルグのアナログモデリング研究の集大成
AL-1(Analog Synthesizer)はMOSS音源から始まったコルグのアナログモデリング研究の集大成になっています。
基本はMOSSのスタンダードオシレータを使った構成に似ていますが、波形の種類がSawとPulseだけでなくDoubleSaw、Saw/Pulse、
DetunedSawなどが加わり、パラメータから何から全く別物になっています。
波形が並列に使用できるタイプの場合WaveMorphによりクロスフェード可能で、ノコギリの鋭さはEdgeパラメータで丸めたり
エッジを効かせることが可能となっています。
オシレータ同士による変調が可能でFM、リングモジュレータ、オシレータシンク等アナログシンセサイザで出来ることは全て網羅されています。
(しかも同時使用可能)
EGもアンプ用に1つとそれ以外に汎用的に使えるEGを4つずつ持っていて、汎用的に使えるLFOも4つもあります。
これらはどんなパラメータにもアサインが可能となっており、さらにAMSを使ったマトリックスモジュレーションで複数のパラメータも
同時に操作可能になっています。
当然ローブーストやドライブで波形を歪ませる機能が付いています。
フィルターはPCM音源同様、自由度の高いフィルタを搭載しています。
外部オーディオの、リング・モジュレーター、フィルター、ドライバー、アンプ、EQによる加工も可能になっている点もポイントです。
とにかく低レイテンシーなのは当たり前で、エイリアスノイズが殆ど無く、とてつもない自由度とクオリティを持ったVAシンセです。
CX-3 は文字通りコルグCX-3の移植
CX-3 Tonewheel Organ はソフトウェアでオルガンの仕組みをシミュレーションした物です。
9本のスライダを使って音色コントロール可能なのだが、KRONOSでは8本+マスターボリュームスライダ使います。
ロータリー・スピーカー、ビブラート/コーラス、オーバー・ドライブ付のアンプ・モデリング、3バンドEQは内部に持っています。
(インサーションエフェクトが要らない!)
本物のオルガンと違うのはEXモードという周波数比設定可能なドローバー4本、及びパーカッション4本を持っている部分です。
しかも左右でスプリット可能です(EXモードでも)
Ver2.1でエフェクトセクションが強化されています。(以前のはClassic CX-3として残っています)
STR-1 Plucked String は打弦/撥弦系の物理モデル音源
アコースティック・ギターやエレキ・ギター、ハープシコードやクラビ、ハープやベル系、さらにはエスニック系など、打ったり、引っ掻いたりして
音を鳴らす楽器を物理シミュレーションで仮想的に再現する音源です。
PCM音源では実現が困難であったタッチによる音色変化や、現実にはない音色の自由な合成などが可能です。
弦の堅さ(ナイロンギターから金属の棒!に至るまで)弾き方(普通に弾く、ノイズで弾く!?PCMで弾く!!??)
弾く力、弾くのに用いるもの(ギターのピックからハンマーまで)ピックアップの位置等を自由に変更したり、
リアルタイムに変化させたりと言った事が可能です。
AMSミキサーを使用し、ある特定の音程にのみ、ピッチ・ベンドをかけられるようにし、それ以外の音程では無効になるようにしたり、
ベロシティの一定値を超えた場合にのみ、STR-1のハーモニクス効果を出したり、ジョイスティックやその他のコントローラーで
2基のLFOをリアルタイムに切り替えるといった事が可能です。
フィルタをパラレルで使用し、PCMとレイヤーを組むことも可能です。EGやLFOのフィルタの構成はAL-1と同じです。
本物の弦楽器シミュレートから存在しないあり得ない弦楽器まで作れる恐るべきプラグインです。
MS-20EX、PolysixEX でKORG Legacy Collectionも取り込む
Windows、Macで発売されているレガシーコレクションの移植です。
MS-20、Polysixの2つを部品レベルでエミュレートしてしまうCMTテクノロジーを採用したソフトシンセサイザです。
ただの移植にとどまらず、MS-20EXはMS-50の要素を取り込み、アレンジされた物、PolysixEXも怒濤の同時発音数180音を実現しています。
ユーザーインターフェイスは当然KRONOSならではのタッチビューによる操作、両方ともAMSミキサーやステップシーケンサ、ベクター、KARMAも使えて、
エフェクタも全部KRONOSのが使えます。
デジタルエディションのWavestation、M1等の内容はHD-1で標準で装備済みなのでLegacy Collectionをも全て手中に納めたといっても過言ではないです。
MOD-7 Waveshaping VPM Synthesizer で01/WやFM音源も取り込む
FM音源も搭載されています。実はヤマハのFMはフリケンシーモジュレーションではなくフェイズ(位相)モジュレーションなんです。
だから正確にはPM音源なんですよ。
Prophecy、Z1、RADIASなどで搭載されているVPM(Variable Phase Modulation)アルゴリズムのテクノロジーをベースにしたセミモジュラーシンセ
という事だが、要はFM音源です。
PCMをモジュレータとして使用可能、ウェーブシェイピング、リングモジュレーションも搭載しており、コルグ01/W、
ヤマハDX7(DX7の全てのアルゴリズムも含み、syxファイル読み込みも可能)ヤマハSYシリーズの真似事も十分可能だし、
コルグ版AFM音源(アドバンスドFM)と言って過言は無いです。
ウェーブシェイプテーブル101種には01/Wのテーブルも全て含まれています。
オペレータに搭載されている波形は
サイン、ノコギリ、三角、矩形、サイン+ウェーブシェイプ、ウェイブシェイプのみ、リングモジュレーションのみ
となっていて、各オペレータにフィードバック回路やリングモジュレータが標準搭載。
EGは各オペレータに専用EGを持っている訳ではなく、9個EGを自由に作成してそこから好きな物をアサインという形を取っています。
ボイス全体の音量変化はAmpEGで付けます。
フィルタはAL-1と同等のマルチモードフィルタを搭載しています。
同時発音数は52音。
1ボイスあたり LFO4基、リトリガー可能な EG10基、キー・トラッキング・ジェネレーター9基、AMSミキサー8基を搭載と
凄まじいモジュレーション機能を搭載しています。
あまりにも自由度が高く、脳みそがトロけそうです。その自由度はヤマハSY99を軽く凌駕しています。
コンビネーションモード
上記の音源を酷使したボイスを16個重ねてコンビネーション音色を作れます。
レイヤーで重ねる、ベロシティスイッチで弾く強さで切り替える、スプリットで左右に分ける、ベクタージョイスティックでモーフィング等、
何でもアリです。
サンプリング機能
TritonからOASYS、M3と続くオープン・サンプリング・システムを継承。
OS、標準プリセットROM、EXsで予約された領域(1GB)を除いたメモリ容量(2GB)がユーザーが使える領域となります。
苦労してメモリ増設して増やしても0.25GBサンプリング領域が増えるだけなので意味がありません。
強力なエフェクター部
エフェクタの種類は197種類。
・インサートエフェクト12系統、ステレオ入出力
・マスターエフェクト2系統、ステレオ入出力
・トータルエフェクト2系統、ステレオ入出力
と恐るべきエフェクタを搭載。全て197種類から選択。
インサート・エフェクトは自由に接続可能なので12個直列に繋げることも可能(笑)
加えてティンバーEQがあり、1ティンバーにつき1基の3バンドEQを搭載。
他のハードシンセと違うのはエフェクターもソフトウェアになってることです。
これによりエフェクタソフトウェアの追加やアルゴリズム変更が可能になっています。
CPU負荷は種類によって異なるが、1個に尽き1%前後のようです。
考えつく物は全て網羅され、ボコーダ、ウェーブシェイプ、ピアノボディのシミュレート、ギターアンプのシミュレートなど、
果てはドップラー効果までなんでもありです。
音色加工系は破壊の限りを尽くし、残響系は思う存分響かせ、モジュレーション系はとことん揺らせます。
KARMAと16トラックHDR
プログラムモードでは一本、コンビネーションモードでは4本同時に走らせることが出来ます。
NAUTILUSにKARMAがありません。
GE(ジェネレーテッドエフェクト)と呼ばれるフレーズやパターンを1000種類近くあり、
それを選択してリアルタイムコントロールしたり自動生成してバリエーションを作り出します。
説明書に書いてあるパラメータが全部出てくる訳ではなく、GE毎に作者オススメのパラメータが画面に表示され、
そのパラメータを変更したりリアルタイムコントロールしてバリエーションを出します。
ノート情報、ベロシティ、デュレーション(音の長さ)、ピッチベンド、などKARMAが次々と自動生成します。
鍵盤を押さえて適当なメロディを演奏するだけで、アレンジャーキーボード製品とは違った良い相棒と演奏している気分に浸れます。
ユーザーエリアもあり、オリジナルGEを格納することも可能です。
※ KRONOS専用GEエディタをhttp://www.karma-lab.com/で購入する必要がある。
16トラックHDRは最高4トラックまで同時録音可能。オートメーション(ノブやスライダの動き)を簡単に記録出来るしなかなか便利です。
まとめ
KRONOSに関してはぶっちゃけOASYS Rebuild(再構築)シンセサイザーであるが、最新のトレンドを程よく汲んでいる。
SSDによるストレージの高速化と耐衝撃性強化、プログラムチェンジの際の音切れを防ぐ「スムース・サウンド・トランジション」機能搭載、
60Wに押さえた消費電力、OASYSより遙かに軽量化し可搬性を強化、大型化したタッチパネル、USB B端子装備によるPCとの接続と外部エディタ、
そして、まともになった価格。
公式ページの製品情報ではOASYSが黒歴史扱いなのがユーザーとしては悲しくなるのだが、
OASYSの化け物じみたシンセサイズ能力を完全移植、さらに追い抜くという偉業を達成したし、私としてはベタ褒めである。
NAUTILUSに関してはぶっちゃけKRONOSの劣化移植である。
OASYS、KRONOSはKORG USA主導で作られたが、NAUTILUSはKORG日本が主導で作っており、KROME EXと同じ液晶にしたため、画面は小さくなり
フィジカルインターフェイスを大幅に削った為、リアルタイムコントロール性能が大幅ダウン。
せっかくOSを64bit化し、大幅にパワーアップ、高速起動等を実現するチャンスを無にするという残念な結果となった。
そもそも、欲しいユーザーはすでにKRONOSシリーズを購入しており、NAUTILUSにわざわざ買い換えるユーザーはいないだろうことは予想できたはずである・・・合掌・・・
KORG USAはwavestate、modwaveでラズベリーパイにご執心で、今後のワークステーションシンセサイザー開発の行方はすこぶる心配な状態です。。。