シンセサイザー研究室

1.オシレーターを作る

synthesize-osc
オシレーター(Oscillator)とは音色の 元となる波形を作る部分の事です。
アナログシンセサイザの基本波形を作る発振器、VCO(Voltage Controlled Oscillator) の事をオシレーターと言っていた事に由来します。
基本波形というのはノコギリ波、パルス波、三角波、サイン波 など単純な波形の事です。
昔はこれら基本波形と「ザー!」というホワイトノイズなどを合成していろんな電子音を作っていました。
シンセサイザーの音と言えば、こういう電子音の事を指していました。

最近のシンセサイザーはアナログ回路をソフトウェアで仮想的にエミュレーションする バーチャルアナログシンセサイザー、楽器の音をメモリに記憶して再生するPCM音源、 楽器の物理構造をコンピュータの計算で再現する物理モデリング、波形と波形を位相変調して音を作り出すFM音源など、 いろんな種類の音源方式があります。

fig1_osc fig2_osc

シンセサイザーの音作りは、まず基本となる波形を作る事から始まります。
ここでは入門という事で、基本波形を使った音色作りを紹介します。

主な基本波形の特徴を紹介します。

●ノコギリ波
SAW ノコギリの形をした波形です。
全ての整数倍音と呼ばれる音の成分を持った波形で、バイオリンなどの弦楽器、
トランペットなどの管楽器を作るのに適しています。
ブラス、ストリングス、リード、ベースなど色々な音色に使えます。
シンセブラス

●矩形波
Square ノコギリ波から奇数倍音を取っ払った波形です。(裏を返せば偶数倍音だけの波形)
四角い形をした波形なので「矩形(スクエア)波」とも呼ばれてます。
クラリネットなどの木管楽器、ハープ、マリンバなどの音色に適しています。

●パルス波
Pulse ファミコンなどで使われてた波形で、心臓の心電図みたいな波形です。
ギターなどの引っ掻く楽器、サックスやオーボエなどのリード音色に適しています。
パルス幅は変える事が可能で、幅が狭いと細くて特徴的な音、幅を広くすると矩形波に 近い音になります。
実はパルス幅を50%にした物を「矩形波」と言っています。
このパルス幅を機械的に大きくしたり小さくしたりして揺らすと厚みのある独特の音になります。
これをパルス・ウィズ・モジュレーション(PWM)と言います。
パルスウイズの例
パルスウイズモジュレーション(PWM)の例

●三角波
Triangle 三角形の形をした波形です。
これもファミコンで使われてた波形で倍音をあまり多く含まない波形です。
リコーダーやフルートに適しています。

●サイン波
Sine 文字通りSIN波です。特徴があまりないポーって波形です。
このサイン波を音程を変えて何個か重ねるとオルガンの音になります。
ロータリースピーカー(回転するスピーカー)で音を出したり、ディストーションエフェクトで汚すとロックオルガンになります。
あらゆる波形はサイン波に分解出来るという理論を応用した加算合成(アディティブ・シンセシス)シンセなんて物もあります。
サイン波を128個以上足し算して音を作るんですね。

●ノイズ
Noise 「ザーッ」というホワイトノイズです。
ノイズなんか出してどうするんだよ、とか思うかも知れませんが、フルートの息使い、風の音、打楽器のノイズ成分などを作る時に使います。
例えば、ノイズと矩形波、または三角波を足して鳴らすとフルートっぽくなります。


ノイズ+三角波=パンフルート
ノイズを使った風の音

波形を選ぶことが、「音の特徴(倍音成分)を選ぶこと」となります。

実際はオシレータが複数鳴らせるようになっていて、 2つの波形を微妙にピッチ(音の高さ)をずらして重ねたり、 両方の波形を掛け合わせる(足し算、かけ算、波形の読み出し方を変える等)など、 様々な方法で波形を変化させて音色を作ることも出来ます。
波形を掛け合わせる事をよくモジュレーションと言ったりします。

また、ピッチを揺らすビブラート、音量を揺らすトレモロ、フィルターを揺らすワウを掛けるという事も出来ます。
LFO
ピッチ、音量、フィルターをゆっくり揺らす機能をLFO(ロー・フリケンシー・ オシレータ)と言います。
LFOの例

時間的に変化を付けることも出来ます。時間的変化の事をエンベロープと言います。
時間的変化を付ける機能をエンベロープジェネレータ(EG)と言います。
例えば、音が鳴り始めるところを、ピッチを少し下げた状態からスタートするとか、 SFXなどの効果音を作る時に使います。
ピッチエンベロープの例
ADSR ADSR2
エンベロープについてはフィルターの章で説明します。


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